紅葉の見ごろで山へ出かける方の多い時期。一方富山県内では山岳遭難が多発していて、県警山岳警備隊が日々登山者の命を守るべく活動しています。まさに過酷な任務。山岳警備隊で初めてとなる女性隊員の奮闘に密着しました。
遭難事故の現場へ坂道を駆け上がる!
登山者の命を守る、富山県警山岳警備隊を追いました。
先月下旬、北アルプスの立山では紅葉が始まっていました。
隊員:
「登山される方、登山届けの提出お願いします」
バスターミナルの室堂駅に到着する大勢の登山者たち。山岳警備隊の田中明希子隊員(29)が声をかけます。拠点となるのは近くの室堂警備派出所。
富山県警山岳警備隊 田中明希子隊員:
「本当に尊敬する先輩方と一緒に警備させていただく機会って少ないので、ひとつでも多くのことを吸収してがんばっていきたいと思います」
田中隊員は4年前、富山県警に採用され、今年春、山岳警備隊初の女性隊員に任命されました。岩壁を登る厳しい訓練も重ねてきました。
富山県では山岳遭難が後を絶ちません。去年は104件と新型コロナで登山者が減ったおととしに比べ30件も急増しました。
先月24日の昼ごろ、110番通報が入りました。
隊員:
「胸が痛い。吐き気がする。どんどん悪くなっていってる?顔色とか唇の色どうですか」
17歳の少年が体調不良で動けなったとの一報。現場は標高3015メートルの立山・大汝山です。
隊員:
「オーケー」「はい」「そしたら出ます」
田中隊員が先輩の早坂隊員と救助に向かいます。
田中隊員(アナウンス):
「救急車両通ります。左右分かれて止まってください。救急車両通ります。左右分かれて止まってください。救急車両通ります」
記者:
「速い」
富山県警山岳警備隊 飛弾晶夫隊長:
「立山・室堂から早坂、田中」
無線(早坂隊員):
「早坂です。現在北側の開けた土地にて、遭難者とともに待機中」
一報から2時間後、消防の防災ヘリが現場の上空に到着しました。動けなくなった少年に隊員が付き添います。少年はヘリで病院に搬送されました。
田中隊員:
「先輩の指示を仰いでやるだけになってしまってるんですけど、判断することの難しさは身にしみて、そばにいて感じて思っています」
夕食の時間はやっと一息がつける時間です。
「ご飯です。ご飯です」
この日の夕食はレンコンの天ぷらにサバの味噌煮。
記者:
「田中さんって、どんな隊員ですか」
富山県警山岳警備隊 早坂 陽隊員:
「非常に頼りになる隊員で、看護師の資格もあるので一緒に事案に行くと心強いです」
田中隊員は兵庫県の大学を卒業後、3年間、京都市内の病院で看護師として働いていました。
田中隊員:
「大学生の時に富山にはじめてきて、剱岳とか立山縦走したりして、それですごくここで働きたいという本当にそれだけ」
心の支えになっているものがあるといいます。
田中隊員:
「私の同期と一緒に入隊した男の子。すごく自分はこの2人に支えられてて、原(隊員)がいなかったら多分警察やめてるぐらい、原にはすごいお世話になってて」
ラジオ体操:
「腕を大きく前にあげて大きく背伸びの運動から」
剱岳を望みながらのラジオ体操。その中に田中隊員の同期・原幸二朗隊員の姿がありました。
原隊員は山岳救助の最前線・剱沢警備派出所にいました。
富山県警山岳警備隊 原幸二朗隊員:
「田中さんは配属もずっと一緒なんすよ。上市署で。だから一緒にトレーニングとかもしてるんですけど、やっぱりちょっとライバル視的な感じで、負けないぞという気持ちはありますね」
夕日に染まる山々。田中隊員が何かを発見しました。
田中隊員:
「あの稜線上に」
またもや山岳警備隊に救助の要請です。
記者:
「2人ですか?1人?」
隊長:
「2人」
立山と別山の間で、登山者が動けなくなったというのです。
記者:
「今、事故があったという一報が入りました。山岳警備隊のあとを追います」
田中隊員:
「ピカピカしてる」
剱沢の隊員が登山者のもとに駆け付けました。大丈夫でしょうか。
記者:
「お疲れ様です。大丈夫そうですか?」
原隊員:
「大丈夫そうです」「寒さはどうですか」「寒さ大丈夫ですね。」
富山県警山岳警備隊 柳本直樹隊員:
「18時22分トラバース道終了しました。稜線の縦走路まで合流しました」
疲労で動けなくなった男性を、原隊員が背負います。
原隊員:
「じゃあ、おんぶしますね。せーの」「じゃあ行こうか」
近くにある山小屋を目指します。
「交代しますね」
険しい道を進む隊員たち。ようやく山小屋の明かりが見えてきました。
無線:
「剱御前小屋までの搬送を完了しました。遭難者容態変わりなしです」
無事に山小屋に到着したようです。
柳本隊員:
「18時45分剱御前小屋までの搬送完了しました。遭難者容態変わりなしです、どうぞ」
原隊員が男性のバイタルチェックを行い、異常がないか確かめます。
男性:
「助かりました」
無事に救助活動を終えることができました。
原隊員:
「無事救助できてほっとしてます。それだけです」
富山県警山岳警備隊 飛弾晶夫隊長:
「紅葉のすばらしい景色を見に奥の山の方に入っていくと、滑ったり崩れてきたりガスがかかったり、登山者の行動自体にかかるリスクというのは大きくなるので、事前に察知して対処して行かなければいけない」
そして翌日の連休最終日。
田中隊員:
「80歳ぐらいのおじいちゃんがここ通ったりしてないですかね」
お年寄りが行方不明の一報が。
早坂隊員:
「上ですか」
記者:
「上です」
早坂隊員:
「上、了解です」
さらに立山では遭難事故も発生しました。
雪山は特に危険です。
みなさん、是非滑落には十分ご注意いただきください。